あいホールディングス(3076)は、防犯カメラやカード発行装置などのセキュリティ機器をはじめ、医療・産業向けの画像処理システムや情報機器を手掛ける企業です。
BtoB(法人向け)分野に特化し、景気変動に左右されにくい安定した収益基盤を構築。2024年には岩崎通信機をグループ化し、事業領域をさらに拡大しました。
高い利益率と財務健全性を背景に、安定配当と株主還元を継続する同社は、中長期での成長にも期待できる高配当株の一つです。
- 高配当株「あいホールディングス(3076)」の事業内容と強み
- 配当利回りや株主還元方針、過去の実績
- 売上高や利益率などの業績・財務データの推移と分析
- 投資家目線で見た注目ポイントとリスク
アイホールディングスってどんな会社?
【上場市場】 | 【業種分類】 |
---|---|
東証プライム | 卸売業 |
あいホールディングス(3076)は、法人向けの専門製品に特化した持株会社で、東証プライム市場に上場しています。
複数のグループ企業がそれぞれの強みを活かし、防犯カメラやICカード発行機、医療・産業向けの画像処理システムなどを手掛けています。
これらは普段目にする機会は少ないものの、社会インフラを支える重要な製品群であり、安定した需要があります。
一般消費者への知名度は高くないものの、ニッチ市場で確かなシェアを持ち、安定的な収益基盤を築いてきました。
高配当株としても注目される同社の事業内容や強みを、ここから詳しく見ていきましょう。
セキュリティ機器・医療機器など多彩な事業領域
セキュリティ機器分野では、公共施設やオフィスビル向けの監視カメラや入退室管理システムを提供し、安心・安全な社会インフラの構築を支えています。
医療・産業分野では、X線や内視鏡画像をリアルタイムで処理・解析するソリューションなど、高精度が求められる領域にも対応。全国の病院・研究機関などでの導入実績も豊富です。
こうした多角的な事業展開は、景気変動に強い安定収益モデルを下支えし、高配当株として安定配当や株主還元を長期にわたり継続できる基盤となっています。
BtoBに特化した安定収益モデル
あいホールディングスは、BtoB(法人向け)分野に特化した製品・サービスを展開しています。
景気や個人消費の影響を受けにくい領域で、官公庁や大学、大企業などの安定需要を捉えることで、堅実な収益モデルを確立しています。
- 競争優位性のあるニッチ市場での技術力と実績
- 長期利用を前提としたストック型ビジネス
- BtoBに特化し景気に左右されにくい安定収益
例えばICカード発行機では国内トップクラスのシェアを誇り、入退室管理や社員証の発行など社会インフラの多様な場面で採用。
こうしたニッチ市場での強みは、製品性能だけでなく長年の実績と信頼の積み重ねによるものです。
また、BtoB領域では一度導入されると長期にわたって使用されることが多く、継続的なメンテナンス契約やシステム更新需要が発生しやすいため、ストック型ビジネスとしても安定感があります。
こうした法人向け事業の積み重ねによって、短期的な景気変動に左右されにくい強固な経営基盤が築かれています。
M&Aによる事業拡大戦略
あいホールディングスは、グループ全体の成長戦略として積極的なM&A(企業買収)を展開しています。
特に、自社の強みと親和性の高い分野や、将来的な成長が見込める技術・サービスを持つ企業を厳選してグループ化することで、事業領域の拡大と競争力の強化を図ってきました。
買収後は、経営の独立性をある程度保ちつつ、財務・販売・開発面などでの支援を通じて、各社の持つ強みをグループ全体の成長に活かす体制が整えられています。
このように、グループシナジーを意識したM&A戦略により、既存事業の底上げと新規領域への展開を両立させており、安定成長の原動力のひとつとなっています。
以下に、あいホールディングスの基本情報をまとめました。
会社名 | あい ホールディングス株式会社 |
本社所在地 | 〒103-0005 東京都中央区日本橋久松町12番8号 電話 03-3249-6335(代表) |
代表者 | 佐々木 秀吉 |
設立 | 2007年4月 |
上場日 | 2007年4月 |
資本金 | 50億円 |
事業内容 | セキュリティ機器、カード・事務用機器、 情報機器、計測機器、 情報通信(ビジネスホン)の製造・販売 建築総合コンサルタント業 傘下事業子会社及びグループの経営管理 |
決算期 | 6月(決算発表8月) |
定時株主総会 | 決算日の翌日から3ヶ月以内(8月決算) |
配当金はいつ?権利確定月
【配当回数】 | 【権利確定月】 | 【配当支払月】 |
---|---|---|
2回/年 | 12月・6月 | 3月・9月 |
2025年6月期の1株あたり配当金は100円(記念配当10円を含む)です。
あいホールディングスは安定した配当を長年継続しており、配当狙いの長期投資にも向いています。
また、配当利回り4%を目安に購入する場合の株価は約2,500円となります。(年間配当100円の場合の試算)
業績・財務

売上高とEPS
過去数年の業績推移を売上高とEPSのグラフでまとめました。
EPS=1株あたりの利益

売上高は安定的な成長を続けており、EPS(1株利益)も右肩上がりの推移を見せています。
特に2025年6月期は過去最高水準となる予想が出ており、企業の収益力向上がうかがえます。
また、EPSの増加は企業の収益性が向上していることを示しており、投資家にとってはポジティブな材料です。
EPSの増加に伴い、配当の安定性や増配の可能性も高まりますし、株価の上昇要因となることが多く、今後の株価動向にも注目が集まりそうです。
営業利益と営業利益率
営業利益と営業利益率の推移もグラフにまとめました。
営業利益率は、売上に対してどれだけ本業で利益を出せているかを示す指標です。企業の“稼ぐ力”を見るうえで、ぜひチェックしておきたいポイントのひとつです。

あいホールディングスの営業利益は、2021年以降に大きく伸び、利益率も20%前後を安定的に維持してきました。
これは、売上の増加だけでなく、効率的な経営や高付加価値ビジネスの展開が進んでいることを示しています。
2025年6月期はやや営業利益率が下がる見込みですが、それでも依然として高い水準を保っており、しっかりした収益力があります。
一般的に営業利益率が10%を超えていれば優良企業とされる中、20%前後を安定して出せるのは非常に優れた収益力です。
自己資本比率と有利子負債比率
あいホールディングスの財務体質を確認するため「自己資本比率」と「有利子負債比率」の推移をまとめました。
一般的に、自己資本比率が40%以上、有利子負債比率が100%未満であれば、財務の健全性が高いとされます。(※業種によって差はあります)
この2つの指標を見れば、企業の安定性・安全性の土台がざっくりとつかめます。
【年度】 | 【自己資本比率】 | 【有利子負債比率】 |
---|---|---|
2015/06 | 70.3% | - |
2016/06 | 69.4% | - |
2017*06 | 71.2% | - |
2018/06 | 73.2% | - |
2019/06 | 78.4% | - |
2020/06 | 81.1% | - |
2021/06 | 80.6% | 0 |
2022/06 | 81.2% | - |
2023/06 | 83.2% | - |
2024/06 | 85.2% | 0 |
直近5年間、自己資本比率は80%を超える高水準を維持しており、財務体質の安定性が際立ちます。
一般的な健全ラインを大きく上回ることで、経済変動や予期せぬ事態にも耐える力が強く、長期的な事業継続を支える基盤となっています。
この安定した財務基盤は、配当の持続性や将来的な増配の可能性を高める要因にもなり、長期投資を検討する上で重要な判断材料です。
営業活動によるCF(キャッシュフロー)
営業活動によるCFとは、会社の本業で得た現金の増減を示す指標です。
売上から経費や仕入れなどを差し引いたあと、実際に手元に残ったお金がどれくらいあるかを表すため、企業の安定性や持続力を判断するうえで重要なポイントになります。

2023年に一時的な落ち込みはあるものの、翌2024年にはしっかり回復しています。
このように営業CFが安定している企業は、配当の原資や将来の成長投資に必要な資金を安定的に確保できるため、財務面の健全さや企業体力の強さがうかがえます。
現金等
現金等とは、企業が保有する現金や、すぐに現金化できる資産(預金・短期保有の有価証券など)を指します。
手元資金が多いほど、急な出費や景気変動にも柔軟に対応でき、財務の安全性を測る重要な指標です。

グラフを見ると、現金等は2015年から着実に増加し、2023年には過去最高水準に到達。直近2024年はわずかに減少していますが、それでも高水準を維持しています。
こうした現金等の積み上げは、不測の事態への備えだけでなく、新たな投資や株主還元の余力にもつながり、投資家にとって安心材料のひとつといえます。
1株当たり配当金と配当性向
配当金と配当性向の推移を表にまとめました。
1株あたりの配当金:実際に受け取れる1株ごとの配当額。
配当性向:企業が稼いだ利益のうち、どれくらいを株主への配当に回しているかを示す割合。
配当性向の目安として、30〜50%程度が一般的とされます。
【年度】 | 【1株配当】 | 【配当性向】 |
---|---|---|
2016/06 | 30 | 24.7% |
2017/06 | 36 | 28.4% |
2018/06 | 38 | 29.4% |
2019/06 | 40 | 35.2% |
2020/06 | 45 | 46.1% |
2021/06 | 45 | 36.3% |
2022/06 | 60 | 36.7% |
2023/06 | 80 | 46.0% |
2024/06 | 90 | 27.2% |
2025/06予 | 100 | - |
2025年6月期の配当予想は、中間配当が45円(すでに実施済み)、期末配当が55円(内訳:普通配当45円+特別配当10円)の合計100円となっています。
この特別配当は、完全子会社化した岩崎通信機の資産売却による特別利益(約13億円)の計上に伴い、当期純利益が当初予想を上回る見通しとなったことから実施される予定です。
また、今後の配当方針についても変更が行われ、株主還元の強化が示されています。
【株主還元方針】
あいホールディングスは、2023年8月18日に配当方針を変更し「配当性向50%以上を基準とし財政状態、利益水準などを総合的に勘案したうえで利益配当を行う」ことを明記しました。
まとめ|注目ポイントとリスク
あいホールディングスは、セキュリティ機器や情報機器などニッチで安定需要のある分野を中心に事業を展開し、堅固な財務基盤と高い自己資本比率を誇ります。
安定配当や将来の増配も期待でき、M&Aによる事業拡大の実績も豊富です。投資家にとっては、長期保有で安定収益を狙える魅力的な銘柄といえます。
ただし、一部事業は景気や為替の影響を受けやすく、特に輸入部材コストや海外展開の採算には注意が必要です。
また、成長戦略の柱であるM&A依存度が高いため、買収先の選定や統合作業がうまく進まなかった場合、業績に影響が出る可能性があります。
総合的に見ると、安定成長と株主還元に魅力を感じつつも、外部環境やM&A戦略の動向を注視しながら投資判断を行いたい銘柄です。