アドソル日進株式会社(3837)は、電力・ガスなどの社会インフラをはじめ、自動車・宇宙・公共防災・医療分野に至るまで、幅広い領域でICTソリューション(ITを使った便利な仕組み)を展開する企業です。
堅実な受託開発力とDX推進を強みに着実に事業を広げており、株主還元にも力を入れています。
配当利回りは2%台と高配当株と比べると控えめですが、業績や財務の安定感が好印象な企業として取り上げています。
アドソル日進ってどんな会社?
【上場市場】 | 【業種分類】 |
---|---|
プライム市場 | 情報・通信業 |
アドソル日進は、1976年創業の独立系システムインテグレーターです。
「独立系SIer(システムインテグレーター)」とは、大手メーカーの系列に属さず、中立な立場でシステム開発を手がける企業のことです。
メーカー系と違って特定の製品に縛られないため、①.顧客ごとに最適なハード・ソフトを選べる②.幅広い業界・分野に柔軟に対応できるという強みがあります。
アドソル日進はこの独立系SIとして、電力・通信・医療・宇宙など幅広い分野で高い技術力と信頼を築いています。
電力の送配電制御からスタートし、以来約50年「通信・監視・制御」の技術力を武器に社会インフラやDX分野で着実に成長してきました。
社会インフラ事業
アドソル日進の柱は、電力・ガスや交通、通信、防災など、暮らしに欠かせない社会インフラを支える分野です。
- 発電所から家庭までを遠隔で監視・制御する電力系統システム
- 電力・ガスの「見える化」を実現するスマートメーター
- 5Gや衛星データを活用した次世代通信インフラの開発
このように社会の安心・安全を守るICT基盤づくりに取り組んでいます。
先進インダストリー事業
日本の「ものづくり」を、DXやIoTで支える領域です。
- EVや自動運転車、医療・ヘルスケア機器など向けの組込みICT
- キャッシュレス決済や電子カルテなど、サービス・エンタープライズ分野の業務システム開発
自動車や医療など成長産業と結びつき、幅広い事業分野へ展開しています。
ソリューション事業
DXを支える独自のソリューションを展開しています。
- GIS(地理情報システム)やIoT空間情報、セキュリティの統合管理
- 自社開発の「COCOYA」「DOCOYA」といったSaaS製品
課題解決に直結する仕組みを提供し、企業のデジタル活用を後押ししています。
グローバル展開・研究開発
国内にとどまらず、海外や研究機関との連携も積極的です。
- 米シリコンバレーにR&D拠点を設置し、IoTセキュリティやAI開発を推進
- 東京大学や慶應義塾大学などとの産学連携で、AI・衛星データ活用にも取り組み
世界的な技術潮流を取り込み、次世代分野の開発を強化しています。
ここまでをまとめると、アドソル日進は電力・ガスといった社会インフラを収益の柱に持つ安定感のある企業といえます。
通信・監視・制御といった分野で培った高い技術力に加え、自動車や医療、SaaS領域への展開によって事業の多角化も進んでいます。
さらに、R&Dや大学との連携を通じて、AIやIoT、宇宙データの活用など将来を見据えた取り組みを進めています。
会社名 | アドソル日進株式会社 Ad‑Sol Nissin Corporation |
本社所在地 | 東京都港区港南4丁目1‑8 リバージュ品川 |
代表者 | 代表取締役会長 兼 CEO 上田 富三 代表取締役社長 兼 COO 篠﨑 俊明 |
設立 | 1976年3月13日 |
上場日 | 2007年2月:JASDAQに上場 2022年4月:東証プライム市場へ移行 |
資本金 | 5億7,000万円(2024年3月現在) |
事業内容 | 社会インフラ・産業・公共分野向け ICTソリューションの開発・提供 |
決算期 | 毎年3月31日 |
定時株主総会 | 6月開催 |
配当はいつ?
【配当回数】 | 【権利確定月】 | 【配当支払月】 |
---|---|---|
2回/年 | 9月・3月 | 12月・6月 |
アドソル日進は、16期連続で増配実績があり株主還元を重視しています。
2026年3月期の年間配当予想は1株あたり37円となっています。(※2025年4月1日に実施した株式分割後ベース)
2025年8月末時点の株価は1,380円台で、配当利回りはおよそ2.7%となっています。
利回り3.5%を狙うなら、株価が1,050円前後まで下がった局面が目安のひとつとなります。
業績・財務

アドソル日進は、社会インフラを支える受託開発を土台にしながら、DXやSaaSといった新しい分野にも取り組み、事業の幅を広げています。
ここからは、売上や利益の動きに加え、財務体質やキャッシュフローの状況などを確認していきましょう。
売上高とEPS
アドソル日進の過去数年の業績推移を、売上高とEPS(1株あたり利益)のグラフでまとめました。売上の安定性やEPSの動きを確認することで、収益基盤の強さが見えてきます。

インフラ需要を背景に売上は全体として堅調ですが、2022〜23年は案件の進行時期や会計処理の変更により、一時的に減収。中身はしっかりしているので、あまり心配はいらなそうです。
EPSはおおむね右肩上がりで、安定感のある利益成長が続いています。
営業利益と営業利益率
営業利益と営業利益率の推移もグラフにまとめました。
営業利益率は、売上に対してどれだけ本業で利益を出せているかを示す指標です。企業の“稼ぐ力”を見るうえで、ぜひチェックしておきたいポイントのひとつです。

近年は営業利益率が安定して10%台前半を維持しており、IT業界平均の8~9%と比べてもやや高めの水準といえます。
自己資本比率と有利子負債比率
財務体質の健全性を確認するため、自己資本比率と有利子負債比率の推移をまとめました。
一般的に、自己資本比率が40%以上あれば財務体質は健全とされます。(※業種によって差はあります)
【年度】 | 【自己資本比率】 | 【有利子負債比率】 |
---|---|---|
2016/03 | 50.3% | 8.16% |
2017/03 | 53.8% | 4.91% |
2018/03 | 55.0% | 7.38% |
2019/03 | 58.7% | 4.36% |
2020/03 | 58.3% | 6.59% |
2021/03 | 64.0% | 1.68% |
2022/03 | 72.4% | 0 |
2023/03 | 70.2% | - |
2024/03 | 70.1% | - |
2025/03 | 69.8% | - |
自己資本比率は約70%と高水準を維持しており、財務の安定感がうかがえます。
営業活動によるCF(キャッシュフロー)
営業活動によるCFとは、会社の本業で得た現金の増減を示す指標です。
売上から経費や仕入れなどを差し引いたあと、実際に手元に残ったお金がどれくらいあるかを表すため、企業の安定性や持続力を判断するうえで重要なポイントになります。

営業CFは年度によって増減はありますが、全体としてプラスを維持しており、企業の体力に安心感があります。
現金等
現金等とは、企業が保有する現金や、すぐに現金化できる資産(預金・短期保有の有価証券など)を指します。
手元資金が多いほど、急な出費や景気変動にも柔軟に対応でき、財務の安全性を測る重要な指標です。

現金等は年によって変動はありますが、直近では30億近くを維持しており、手元資金の厚みから財務の安定感がうかがえます。
1株当たり配当金と配当性向
配当金と配当性向の推移を表にまとめました。
1株当たり配当金:実際に受け取れる1株ごとの配当額。
配当性向:企業が稼いだ利益のうち、どれくらいを株主への配当に回しているかを示す割合。
配当性向の目安として、30〜50%程度が一般的とされます。
【年度】 | 【1株配当】 | 【配当性向】 |
2017/03 | 10円 | 33.8% |
2018/03 | 10.5円 | 34.3% |
2019/03 | 13.5円 | 35.6% |
2020/03 | 16円 | 35.6% |
2021/03 | 17.5円 | 36.0% |
2022/03 | 18円 | 42.5% |
2023/03 | 19円 | 42.0% |
2024/03 | 21.5円 | 40.9% |
2025/03 | 30円 | 45.6% |
2026/03予 | 37円 | - |
配当は16期連続で増配中。累進配当方針を掲げており、今後も安定した増配が期待できそうです。
なお、2025年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施しています。
まとめ

アドソル日進は、社会インフラを支える堅実なシステム開発に強みを持ちつつ、近年はDXやSaaS領域にも展開を広げる、バランスの取れた企業です。
「インフラ制御・監視 × AI・IoT × SaaS展開」といった、守りと攻めを兼ね備えた中堅SI企業として存在感を高めています。
財務面では無借金経営に加え、自己資本比率の高さや安定した営業キャッシュフローが強みで、安心感のある基盤が整っています。
配当についても16期連続で増配を続けており、累進配当方針を掲げることで、今後も株主還元の安定感が期待できます。
総合的に見ると、業績の推移や成長戦略を意識しながら、長期保有を前提に検討できる銘柄です。