大日本塗料(4611)は、配当金と株主優待の両方が楽しめる銘柄です。
この記事では、会社概要や優待の内容、業績や財務、配当方針まで、公式IR資料をもとにわかりやすく整理しています。
2025年8月時点の株価と会社計画ベースで試算すると、配当利回りはおよそ4.5%(参考値)。高配当の部類に入る水準です。
長期投資や配当収入を重視する方に向けて、会社概要から優待・業績・財務まで、全体をわかりやすく整理しました。
大日本塗料の会社概要と事業内容
【上場市場】 | 【業種分類】 |
東証プライム | 化学 |
大日本塗料株式会社(4611)は、建築・鉄鋼・インフラなど、幅広い分野に塗料を提供する総合メーカーです。
1929年に設立され、90年以上の歴史を持つ老舗企業として、国内外の橋梁や建物、自動車部品など、多くの構造物に使用される塗料を製造しています。
事業領域は、塗料やジェットインクの製造・販売をはじめ、各種塗装機器や装置の販売、塗装工事の施工まで多岐にわたります。
こうした幅広い事業展開により、長年にわたり安定した顧客基盤と信頼を築いてきました。
会社名 | 大日本塗料株式会社 Dai Nippon Toryo Co., Ltd. |
住所 | 〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場1丁目18番11号 SRビル長堀 |
代表者 | 代表取締役社長 里 隆幸 |
設立 | 1929年(昭和4年)7月25日 |
上場日 | 1949年5月 |
資本金 | 88億2,736万9,650円(2024年3月31日現在) |
事業内容 | ・塗料・ジェットインクの製造・販売 ・各種塗装機器装置の販売 ・塗装工事等 |
決算期 | 3月 |
定時株主総会 | 毎年6月下旬 |
企業の強み
大日本塗料の強みは、重防食分野で培った商品力と、材料から機器・施工まで一気通貫で対応できる体制にあります。さらに、1929年創業からの長い歴史が、その信頼を支えています。
- 重防食の実績
橋梁・プラント等の長寿命化ニーズに応える高耐久塗料が主な領域の一つ。 - 一気通貫
塗料+ジェットインクに加え、塗装機器や塗装工事までグループで対応。 - 歴史と基盤
1929年創業の老舗で、長年の取引関係・実績があります。
下落リスク/気にしたい点
投資を考える上では、企業の魅力だけでなく、事業に影響する可能性のあるリスク要因にも目を向けておきたいところです。
大日本塗料においても、以下のような点が懸念材料として挙げられます。
- 原材料・為替リスク
石油化学系の原材料価格が高騰すると、コスト圧迫要因になります。為替の変動も影響します。 - 景気・公共投資の影響
重防食や建材は、公共インフラ投資や住宅市場の動向に左右されやすい側面があります。 - 法規制・品質コスト
環境規制(例:VOC対応)や長期保証製品のクレーム対応などで、対応コストが発生する可能性があります。
補足:VOC対応とは?
VOCの排出を抑制するための製品・製造工程・技術の対応策のことです。
環境規制が年々厳しくなる中、塗料業界では「低VOC塗料」や「水性塗料」へのシフトが求められており、メーカー側には以下のような対応が必要です。
具体的なVOC対応の内容 | |
---|---|
製品レベル | ・低溶剤タイプ、水性塗料、高固形分塗料への切替 ・トルエンフリー、キシレンフリーなどの安全配合 |
製造・工程 | ・有機溶剤の使用量の削減 ・乾燥・排気処理設備のVOC対策(吸着フィルターなど) |
法令対応 | ・大気汚染防止法(日本) ・RoHS指令/REACH規則(欧州)など海外規制にも準拠 |
コスト・影響 | ・水性塗料は扱いが難しく、品質・作業性・乾燥時間の調整が課題 ・規制対応による製造コストの増加もリスクとなる |
環境対応:VOC削減・水性塗料への取り組み
環境負荷の軽減が求められる塗料業界において、大日本塗料もさまざまな環境対応に取り組んでいます。
- VOC排出削減
構造物向け重防食塗料でVOC排出量を最大約31%削減した実績があります。 - 環境配慮型製品の開発
低VOC塗料・ゼロVOC塗料のほか、水性・粉体・高固形分塗料などを採用しています。 - DNT水性重防食システム
旧来の溶剤型からすべて水性に切り替えた塗装システムも開発されています。
参考資料:大日本塗料 統合報告書
配当はいつ?権利確定月
【配当回数】 | 【権利確定月】 | 【配当支払月】 |
1回/年 | 3月 | 6月 |
大日本塗料の配当は年1回で、権利確定月は3月、支払月は6月です。
会社予想では、2026年3月期の年間配当は1株あたり58円です。(参考:公式IR)
2025年8月時点の株価が1200円台なので、利回りはおよそ4.5%前後になります。(年間配当58円で試算・参考値)
株主優待の内容・条件・贈呈時期を解説
大日本塗料(4611)では、年1回(3月末)時点で100株以上を保有している株主を対象に、株主優待を実施しています。
優待内容は保有株数と継続保有期間に応じて変化し、最小条件ではQUOカード1,000円分がもらえます。贈呈時期は毎年6月下旬ごろです。
保有株式数 | 継続保有期間 | 優待内容 (QUOカード) | 贈呈時期 |
---|---|---|---|
100株以上 | 1年以上3年未満 | 1,000円分 | ■贈呈時期 6月下旬発送予定 |
100株以上 | 3年以上 | 2,000円分 | |
1,000株以上 | 1年以上3年未満 | 3,000円分 | |
1,000株以上 | 3年以上 | 5,000円分 |
継続保有は、毎年3月末・9月末の株主名簿に連続記載されていることが条件です。
保有年数が長くなるほど、もらえる優待額も増える仕組みになっています。
また、配当と株主優待をあわせることで、実質的な利回りにも十分な魅力があります。
同じくQUOカード株主優待を実施している銘柄としては立川ブラインド工業(7989)もあります。
業績と財務の安定性をチェック

売上高とEPS
大日本塗料の過去数年の業績推移を売上高とEPSのグラフでまとめました。
EPS=1株あたりの利益

2026年に売上高が大きく伸びる背景には、神東塗料の子会社化による連結寄与の反映があり、一般塗料回復や価格是正も追い風になっています。
EPSが2025年に急上昇したのは、神東塗料連結化による負ののれん発生益などの一時利益の影響です。2026年にはその反動でEPSが落ち着く見通しです。
ただし、2025年以降は本業の利益改善も進んでおり、EPSのベース自体は回復傾向にあります。
補足:負ののれん(Negative Goodwill)とは?
- 買収価格が純資産よりも安かった場合に発生します。
- 会計処理では「お得に買えた分」が利益として認識され、これを「負ののれん発生益」と呼びます。
営業利益率と営業利益率
営業利益と営業利益率の推移もグラフにまとめました。
営業利益率は、売上に対してどれだけ本業で利益を出せているかを示す指標です。企業の“稼ぐ力”を見るうえで、ぜひチェックしておきたいポイントのひとつです。

化学業界での営業利益率は5〜10%が目安とされます。大日本塗料の営業利益率はこの水準に近い推移を見せており、直近は改善傾向です。
ここ数年は価格是正や効率化の効果で改善が進んでいますが、2026年は売上増に比べてやや利益率が下がる見通しです。今後は収益構造をさらに強化できるかがポイントになりそうです。
自己資本比率と有利子負債比率
財務体質の健全性を確認するため、「自己資本比率」と「有利子負債比率」の推移をまとめました。
一般的に、自己資本比率が40%以上、有利子負債比率が100%未満であれば、財務体質は健全とされます。(※業種によって差はあります)
【年度】 | 【自己資本比率】 | 【有利子負債比率】 |
---|---|---|
2016/03 | 42.3% | 34.79% |
2017/03 | 48.5% | 15.52% |
2018/03 | 53.5% | 4.88% |
2019/03 | 53.6% | 7.66% |
2020/03 | 54.4% | 9.96% |
2021/03 | 56.0% | 12.27% |
2022/03 | 55.9% | 8.67% |
2023/03 | 56.1% | 9.61% |
2024/03 | 58.6% | 8.56% |
2025/03 | 48.8% | 17.8% |
大日本塗料は自己資本比率が概ね50%前後で推移しており、有利子負債比率も20%未満と低水準に抑えられています。
借入依存度が小さいため、景気変動時にも財務的な安定感がある点は安心材料です。直近2025年は自己資本比率がやや低下しましたが、依然として健全な水準にあります。
営業活動によるCF(キャッシュフロー)
営業活動によるCFとは、会社の本業で得た現金の増減を示す指標です。
売上から経費や仕入れなどを差し引いたあと、実際に手元に残ったお金がどれくらいあるかを表すため、企業の安定性や持続力を判断するうえで重要なポイントになります。

大日本塗料は過去10年、営業CFを黒字で維持しています。2023年に一時落ち込みがありましたが、その後は回復基調にあり、本業の稼ぐ力は安定しています。
基本的には黒字を維持できていれば健全といえます。
現金等
現金等とは、企業が保有する現金や、すぐに現金化できる資産(預金・短期保有の有価証券など)を指します。
手元資金が多いほど、急な出費や景気変動にも柔軟に対応でき、財務の安全性を測る重要な指標です。

大日本塗料の現金等は年々増えてきており、特に2025年には大きく伸びました。手元資金がしっかりあることで、急な出費への対応や新しい投資にも余裕を持って取り組めるため、安心感があります。
1株当たり配当金と配当性向
配当金と配当性向の推移を表にまとめました。
1株当たり配当金:実際に受け取れる1株ごとの配当額。
配当性向:企業が稼いだ利益のうち、どれくらいを株主への配当に回しているかを示す割合。
配当性向の目安として、30〜50%程度が一般的とされます。
【年度】 | 【1株配当】 | 【配当性向】 |
---|---|---|
2017/03 | 20円 | 11.2 |
2018/03 | 25円 | 15.9 |
2019/03 | 25円 | 19.9 |
2020/03 | 25円 | 19.4 |
2021/03 | 25円 | 35.9 |
2022/03 | 25円 | 34.8 |
2023/03 | 25円 | 20.5 |
2024/03 | 35円 | 21.6 |
2025/03 | 49円 | 14.8 |
2026/03予 | 58円 | - |
大日本塗料は長らく25円配当を継続してきましたが、直近は増配基調にあり、2026年3月期には58円が予想されています。配当性向は控えめで、安定配当を維持しながら、まだ増配の余地もありそうです。
まとめ

大日本塗料(4611)は、建築・鉄鋼・インフラ向けに幅広く塗料を提供している総合塗料メーカーです。90年以上の歴史を持ち、橋梁や建物など社会インフラに欠かせない分野を中心に事業を展開しています。
業績は売上高・利益ともに安定的に推移し、営業利益率も一定の水準を維持しています。自己資本比率や現金等も堅調で、財務基盤の強さから企業の安定性がうかがえます。
営業キャッシュフローも黒字を継続しており、本業から着実に資金を生み出せる体制が整っています。配当は長期にわたって安定しており、近年は増配基調にあります。配当性向も無理のない範囲に抑えられており、安定収入を重視する投資スタイルに適した銘柄といえるでしょう。
安定した配当に加えて株主優待も魅力で、長く持ちたくなる銘柄です。