フリーキャッシュフロー(FCF)とは?計算方法や見方を初心者向けに解説

投資知識

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企業の決算を見ていると、売上高や営業利益のほかに、営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)という数字が出てきます。

本業でどれだけ現金を稼いでいるのかを見るための数字です。

営業CFについては、こちらの記事をご覧ください👇

では、営業CFで稼いだお金は、そのまま会社が自由に使えるお金なのでしょうか。

実はそうではありません。会社は稼いだお金の中から、工場の設備を更新したり、店舗を出したり、システムに投資したりする必要があります。

事業を続けたり成長させたりするために、支出しなければならないお金があるからです。

こうした支出を差し引いたあと、どれだけのキャッシュが残るのかを見るための指標が、フリーキャッシュフロー(FCF)です。

営業CFが「本業でどれだけ稼いだか」を示すのに対して、FCFは「稼いだ後にどれだけ残ったか」を示します。

配当や自社株買い、借入金の返済に回せる余力を考えるうえでも、重要な数字です。

この記事では、FCFの意味や計算方法、プラス・マイナスの見方、決算で確認するときのポイントについて解説します。

フリーキャッシュフロー(FCF)とは?

FCFの基本的な意味

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が本業で稼いだキャッシュから、事業を維持・成長させるために必要な投資に使ったキャッシュを差し引いたものです。

簡単にいえば、必要な投資を行ったあとに、企業にどれだけキャッシュが残ったのかを見るための指標です。

企業が自由に使えるお金とは?

企業は、本業でキャッシュを稼いでも、そのすべてを自由に使えるわけではありません。

事業を続けたり成長させたりするためには、一定の投資が欠かせないからです。

こうした必要な投資を行ったあとに残ったキャッシュは、さまざまな用途に活用できます。

  • 配当(株主への利益還元)
  • 自社株買い(発行済み株式を買い戻すことで株主への還元につなげる)
  • 借入金の返済(金融機関などからの借入金を返済する)
  • 将来の投資に備える(新たな設備投資や事業への投資に備えて手元に残す)
  • 内部留保(企業内部に資金を蓄えておく)

ただし、FCFがそのまま「好きなように使える現金」という意味ではありません。

企業には運転資金など、継続的に必要となる資金もあります。

そのためFCFは、企業が事業に必要な支出を行ったあと、どの程度の資金余力を生み出しているのかを見るための目安として考えると分かりやすいでしょう。

営業CFとFCFの関係

FCFを理解するには、営業CFとの関係を押さえておくことが大切です。

営業CFは、本業によってどれだけキャッシュを生み出したのかを見る数字です。

一方、FCFはそこから事業に必要な投資を差し引いたあと、どれだけキャッシュが残ったのかを見ます。

営業CFFCF
何を見る?本業でどれだけキャッシュを生み出したか必要な投資をした後にどれだけキャッシュが残ったか
決算書での扱いキャッシュ・フロー計算書にそのまま記載されている記載されていない(自分で計算する)
見るポイント本業のキャッシュ創出力投資後の資金余力

つまり、営業CFとFCFは別々の数字として見るのではなく、本業でキャッシュを生み出し、その後に必要な投資を行った結果、どれだけ残ったのかという流れで考えると理解しやすくなります。

FCFはどうやって計算する?

FCFの基本的な計算式

フリーキャッシュフロー(FCF)は、一般的に次の計算式で求めます。

FCF = 営業CF + 投資CF

営業CFは、本業によって生み出したキャッシュです。一方、投資CFは、設備投資や固定資産の取得など、将来の事業に向けて使ったキャッシュを表します。

設備投資などを行うと投資CFはマイナスになることが多いため、営業CFに投資CFを足すことで、必要な投資を行ったあとにどれだけキャッシュが残ったのかを計算できます。

決算書のどの数字を使う?

FCFは、決算書に「フリーキャッシュフロー」という項目がそのまま記載されているわけではありません。

計算するときは、キャッシュ・フロー計算書に記載されている次の2つの数字を使います。

使う数字キャッシュ・フロー計算書の項目
営業CF営業活動によるキャッシュ・フロー
投資CF投資活動によるキャッシュ・フロー

この2つを使って、次のように計算します。

営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー = FCF

なお、投資活動によるキャッシュ・フローには、設備投資だけでなく、固定資産や有価証券の売却、企業買収などによるキャッシュの増減も含まれます。

そのため、FCFを確認するときは、計算結果だけでなく、投資CFがどのような内容で増減しているのかも確認することが大切です。

FCFがプラス・マイナスの場合はどう見る?

FCFは、営業CFと投資CFの大きさによって、プラスにもマイナスにもなります。

ここでは、具体的な数字を使って、FCFがプラス・マイナスになるケースを見ていきましょう。

FCFがプラスの場合

営業CF:+100億円
投資CF:−60億円

この場合、100億円 +(−60億円)= +40億円となり、FCFは40億円です。

本業で100億円のキャッシュを生み出し、60億円を投資に使ったあと、40億円が残ったことになります。

このようにFCFがプラスであれば、必要な投資を行ったあとにもキャッシュを生み出していると考えることができます。

残ったキャッシュは、配当や自社株買い、借入金の返済などに活用されることがあります。

ただし、FCFがプラスだからといって、それだけで企業の状態が良いとは限りません。

投資を絞った結果としてFCFが増えているケースもあるため、こうした点は4章で詳しく確認します。

FCFがマイナスの場合

一方、営業CFよりも投資によるキャッシュの支出が大きければ、FCFはマイナスになります。

営業CF:+100億円
投資CF:−120億円

この場合だと、100億円 +(−120億円)= −20億円となり、FCFは20億円のマイナスです。

本業では100億円のキャッシュを生み出していますが、120億円を投資に使ったため、FCFがマイナスになっています。

ここで注意したいのは、FCFがマイナスだからといって、必ずしも悪いわけではないということです。

工場の新設や設備の更新、新規事業への投資など、将来に向けて大きな投資を行っている場合もあります。

そのため、FCFがマイナスの場合は、何にキャッシュを使ったのかを確認することが大切です。

営業CFとFCFを組み合わせて見る

FCFを見るときは、営業CFも一緒に確認すると、キャッシュの状況をより分かりやすく把握できます。

営業CFFCF状態
プラスプラス本業で稼ぎ、投資後にも残っている
プラスマイナス本業で稼いだ以上の投資をしている
マイナスプラス要確認
マイナスマイナス特に注意

営業CFがプラス・FCFがプラスなら、本業でキャッシュを生み出し、投資を行ったあとにもキャッシュが残っている状態です。

営業CFがプラス・FCFがマイナスなら、本業でキャッシュを生み出しているものの、それを上回る投資を行っている状態です。

営業CFがマイナス・FCFがプラスの場合は、資産の売却などにより投資CFが一時的にプラスになっている可能性があるため、内容の確認が必要です。

特に注意したいのが、営業CFとFCFがどちらもマイナスの場合です。

本業でキャッシュを生み出せておらず、投資を含めた結果でもマイナスになっているため、なぜこの状態になっているのかを確認する必要があります。

このように、FCFは単純にプラス・マイナスだけを見るのではなく、営業CFとの関係や投資CFの内容まで確認することが大切です

FCFを見るときのポイント

FCFは、単純にプラスかマイナスかを見るだけでは、企業の状況を十分に判断できません。

決算でFCFを確認するときは、その数字がどのように生まれたのかを見ることが大切です。

1年だけで判断しない

FCFは、毎年同じように推移するとは限りません。

たとえば、大型の設備投資を行った年は投資CFが大きくマイナスになり、FCFも大きく減少することがあります。

反対に、保有している土地や有価証券などを売却した年は、投資CFが一時的にプラスになり、FCFが大きく増えることもあります。

そのため、1年分のFCFだけで判断するのではなく、複数年の推移を見ることが重要です。

FCFが継続してプラスなのか、一時的な増減なのかを確認しましょう。

営業CFがプラスかを確認する

FCFを見るときは、まず営業CFがプラスになっているかを確認しましょう。

FCFは営業CFと投資CFから計算されるため、営業CFがマイナスであっても、投資CFの内容によってはFCFがプラスになることがあります。

このような場合は、本業で生み出したキャッシュによるものなのか、投資活動における一時的な要因によるものなのかを区別して見る必要があります。

また、FCFが増えているように見えても、それが積極的な投資によるものではなく、必要な投資を控えたことによる増加である場合もあります。

短期的にはFCFが改善して見えても、将来に向けた投資が不足している可能性があるため、投資CFの内容と合わせて確認することが大切です。

投資CFの中身を確認する

FCFを見るときは、投資CFの金額だけでなく、何にキャッシュを使ったのか、何によって増減したのかも確認しましょう。

投資CFには、設備投資だけでなく、固定資産や有価証券の売却、企業買収などによるキャッシュの増減も含まれます。

増減の例
  • 工場や店舗などへの設備投資
  • システムへの投資
  • 固定資産の売却
  • 有価証券の売却
  • 企業買収

同じFCFのプラスでも、本業で稼いだキャッシュから必要な投資をした結果としてプラスになったのか、資産の売却などによってプラスになったのかでは意味が異なります。

業種による違いも考える

FCFは、業種によっても傾向が異なります。

たとえば、工場や設備などに多額の投資が必要な製造業、鉄道、通信、電力などでは、設備投資の負担が大きくなりやすく、FCFが小さくなったり、マイナスになったりすることがあります。

一方、設備投資の負担が比較的小さいソフトウェアやサービス業などでは、FCFが大きくなりやすい傾向があります。

そのため、FCFの金額だけを業種の異なる企業同士で単純に比較するのは適切ではありません。

同じ業種の企業や、その企業自身の過去の推移と比較することが大切です。

FCFだけで企業の良し悪しを判断しない

FCFは、企業が本業でキャッシュを生み出し、必要な投資を行ったあとにどれだけキャッシュが残るのかを見るための指標です。

ただし、FCFの金額だけで企業の良し悪しを判断することはできません。

FCFが多ければ優良企業とは限らない

前章で見たように、FCFは投資額の大小によっても変動するため、金額の大きさだけを見て判断するのは十分ではありません。

また、FCFだけでは、企業の財務状況や利益の状況、配当の負担などを十分に把握することもできません。

そのため、FCFは企業のキャッシュ創出力や資金余力を見るための一つの指標として考えることが大切です。

FCFと配当の関係を見る

高配当株を選ぶときには、FCFと配当の関係も確認しておきたいポイントです。

企業が配当を支払うためには、キャッシュが必要です。

FCFが継続的にプラスであれば、事業活動から生み出したキャッシュを配当などの株主還元に回しやすくなります。

一方で、FCFを上回る配当を長期間続けている場合は注意が必要です。

不足するキャッシュを借入金や手元資金などで補っている可能性があるためです。

そのため、高配当株を見るときは、配当利回りだけでなく、FCFと配当のバランスも確認しておきましょう。

高配当株の銘柄選びで確認したい指標については、こちらの記事で詳しく解説しています👇

まとめ

フリーキャッシュフロー(FCF)は、営業CFと投資CFから、企業が投資を行ったあとにどれだけキャッシュを残しているのかを見るための指標です。

この記事のポイントをまとめると、次のとおりです。

POINT
  • FCFは「営業CF+投資CF」で計算できる
  • 営業CFは「稼ぐ力」FCFは「稼いだ後の余力」を見る
  • 営業CFとFCFがどちらもマイナスの場合は要注意
  • FCFがマイナスでも、将来に向けた積極的な投資による場合がある
  • 1年だけでなく複数年の推移を見て、投資CFの中身や業種差も踏まえて確認する
  • FCFだけで判断せず、配当など他の指標と合わせて見る

FCFを見ることで、企業が本業で生み出したキャッシュをどの程度投資に回し、そのあとにどれだけ余力を残しているのかを確認できます。

決算を見るときは、FCFの数字だけでなく、営業CFと投資CFをセットで確認することが大切です。